【書評レビュー】太平洋戦争終戦75周年の節目に読んでほしい「あの戦争はなんだったのか:大人のための歴史教科書」

スポンサーリンク
書評

アメリカと日本が太平洋を舞台に争った戦争から、2020年で75年が経とうとしています。

ぼくが太平洋戦争について記憶があるのが、広島や長崎に落とされた原爆について話を初めてきいた小学生のころです。今年ぼくは39歳になるので、太平洋戦争について知ってから、すでに30年近く時間が過ぎていることになります。

中学生だった14歳のときに太平洋戦争終戦50周年でしたが、あの頃は8月15日が近づくと、テレビで戦争を実際に経験した方のドキュメントが放映されていたのを記憶しています。

50周年から一年、また一年と過ぎていくうちに、テレビで戦争を経験された方のドキュメントを放送する回数が減っていったような気がします。

終戦時に20歳だった方も、75年も月日が過ぎれば95歳を迎えており、すでに鬼籍に入られた方も多くなっています。

あの異常な時代背景で戦争を経験した方がいなくなり、日本人にとって、あの戦争は記憶のなかに残る戦争になってしまいます。

日本人として、少なくともあの時代に起きた戦争に向き合い、自分なりに意味を考えてみることが必要なのだと思い、15年前に保坂正康さんによって書かれた著書を読みました。

スポンサーリンク

「あの戦争はなんだったのか:大人のための歴史教科書」 内容

あの戦争は何だったのか: 大人のための歴史教科書 (新潮新書)」は、ノンフィクション作家の保坂正康さんが、太平洋戦争が何故引き起こされ、どうして戦略もないまま続けられてしまったのかを書いた本です。

著書は各地で繰り広げられた戦闘ではなく、日本を戦争に先導し、終戦を迎えるまでに軍部や政治家、そしてそこに存在する雰囲気に焦点をあてて書かれています。

  • 旧日本軍のメカニズムと日本を包んでいた空気
  • 開戦から終戦まで
  • 戦争中に繰り広げられた関係者の考え

主に3つの視点で書かれていますが、個人的にはこれまで歴史の授業でしか学んでいなかった太平洋戦争について、新たな側面から真実を知ることができた良書だと思っています。

特に、開戦後の快進撃からアメリカの反撃で敗退を繰り返していく中で、日本は戦略を持たずに戦術のみで、自分たちの言葉と意思決定に酔いしれたさまが、日本を敗戦に追いやる過程がわかります。

保坂正康さんの経歴

保坂正康さんは、1939年に北海道で生まれ、1945年の終戦も北海道の札幌で迎えています。

同志社大学在学中は演劇研究会に所属していましたが、そのときに特攻隊員を描いた創作劇を書いています。そのため、大学生のときから太平洋戦争について意識していたのかもしれません。

大学卒業後は電通PRセンターや朝日ソノラマを経て独立、ノンフィクション作品を手掛ける作家として活躍されています。

「あの戦争はなんだったのか:大人のための歴史教科書」 目次

あの戦争は何だったのか: 大人のための歴史教科書 (新潮新書)」は、五章に及ぶ内容で構成されています。

全編251ページですが内容を絞っているため、3時間もあれば十分読めてしまう内容です。だからといって、内容が薄いわけではなく、考えさせられる問いが数多く書かれています。

第一章 旧日本軍のメカニズム
    職業軍人への道
    一般兵を募る「徴兵制」の仕組み
    帝国陸海軍の機構図

第二章 開戦に至るまでのターニングポイント
    発言せざる天皇が起こった「二・二六事件」
    坂を転げ落ちるように 「真珠湾」に至るまで
    
第三章 快進撃から泥沼へ
    「この戦争はなぜ続けるのか」 二つの決定的配線
    曖昧な”真ん中”、昭和十八年

第四章 敗戦へ 「負け方」の研究
    もはやレールに乗って走るだけ
    そして天皇が動いた

第五章 八月十五日は「終戦記念日」ではない 戦後の日本

感想 大局観をもって戦況を判断し、戦争を終結させる戦略が欠如していた 

本を読み終えたあとに一番印象的だったのは、日本は太平洋戦争をどのように終結させるのか、戦略を一切持っていなかったことでした。

太平洋戦争開戦前から中国で日中戦争を戦っており、目の前の状況に考えをとらわれて、日本がどのように生き残っていくといた大局的な考えが、徹底的に欠如していたと感じました。

「アメリカに石油を禁輸されたのだから仕方ない」といった声もありますが、実は海軍が戦争をしたいがために、石油備蓄量を報告しなかったり、禁輸に対して民間が海外で合弁プロジェクトを立ち上げて、石油を確保しようとした動きが軍部につぶされた事実があります。

これは、組織として部分最適に陥り、日本という国のなかで縄張り争いをしていた結末とも言えます。

そして、二・二六事件から1941年の開戦に至るまでの空気感も複雑に絡み合い、日本は戦争へひた走り、そして敗戦を迎えました。

太平洋戦争は記憶のなかにとどめられていきますが、今いちど、日本が経験した悲劇について、この本を通じて考えるきっかけになればいいと思います。

あの戦争にはどういう意味があったのか、何のために310万人もの日本人が死んだのか、きちんと見据えなければならない。

書評
スポンサーリンク
シェアする
nobusanをフォローする
「やりたいことは、全部やれ!」